creature強制法勉強日記(4月28日): creature強制法がproperになる十分条件の一つ

執筆者: 後藤 達哉, 執筆日: 2025年4月28日

本記事は[RS99]のTheorem 2.1.4の行間を埋めただけのものである. 原論文と異なり,強制概念の小さい元ほど強いという流儀を採用する.

必要な定義は4月27日の記事に書いたので参照のこと.

感想:添え字がいっぱいあって大変だけど,やっていることはMathias強制法がproperなことの証明とかを素朴に一般化しただけなので,冷静になればいける.

注意

以下,条件(w,t0,)に対してpos(w,t0,,tm1)から元を取ることがあるが, この集合が非空な時点で|w|=mdownt0が従うから,暗にwbasis(t0)なこと (つまり条件の要請の(i)(wbasis(ti))の証拠i0となっている)を要請しているのがわかる.

しかし,そのような条件は以下の補題で見る通り稠密にある.
補題1

Qs(K,Σ):={pQs(K,Σ):wpbasis(t0p)}とおくとこれはQs(K,Σ)の稠密部分集合となる. より強く任意のpQs(K,Σ)についてqQs(K,Σ)が存在してq0pとなる.

証明.iωであってwpbasis(tip)となるものを取る. q=(wp,tip,ti+1p,)は所望の条件である. (証明終わり)

定義 (nice)

(K,Σ)をcreating pairとする.これがniceであるとは, 任意のsΣ({t0,,tm1}) (t0,,tm1mdowntiが昇順になるような枚挙)についてbasis(t0)basis(s)を満たすこととする.

以下,creating pairは常にniceだと仮定する.

補題2

wpos(w,s0,,sn1)かつwpos(w,sn,,sn+k1)とする. このときwpos(w,s0,,sn+k1)である.

証明は省略する.

補題3

(K,Σ)をcreating pairとする.

p=(w,s0,,sn,sn+1,sn+2,)Qs(K,Σ)とする. また,wpos(w,s0,,sn1)とする. このときq:=(w,sn,sn+1,sn+2,)Qs(K,Σ)の条件となりp以下にいる.

証明. まずqが条件であることを確認していく.

任意のi<ωについて,muptiq=mdownti+1qであることは明らか.

wbasis(t0q)であること:pが条件であるので,wpos(w,s0,,sn1)について,wbasis(sn)=basis(t0q)となる.

どんな有限区間Iωとどんなupos(w,{tiq}iI)についてもj=max(ωI)についてubasis(tjq)であること:補題2pが条件なことより従う.

(tiq:iω)はノルム条件sを満たすことは明らか.

以上よりqが条件であることが確かめられた. qpは明らか. (証明終わり)

上記のpwからqを作る写像をϕとしよう:q=ϕ(p,w)

補題4

(K,Σ)をcreating pairとする.

p,qQs(K,Σ)を条件とする. qpとしwpos(wq,s0q,,sn1q)とする. するとϕ(q,w)ϕ(p,w)である.

証明.qpの証拠となる区間列(In:nω)を取る: wqpos(wp,tip:iI0)かつtnqΣ(tip:iIn+1) (for every nω).

このときwpos(wp,t0p,,tmin(In)1p)であるので,条件ϕ(p,w)を考えることができる.

J0=,Jm+1=In+m+1で定まる区間列がϕ(q,w)ϕ(p,w)の証拠となる. (証明終わり)

補題5

(K,Σ)をcreating pairとする.

q,rQs(K,Σ), wpos(wq,t0q,,tn1q)とし,r0ϕ(q,w)とする. このときqQs(K,Σ)があって,qnqかつϕ(q,w)=rである.

証明. q=(wq,t0q,,tn1q,t0r,t1r,)とおく.

qが条件なことを見よう. muptn1q=mdownt0rを見る必要があるが,両者は|w|に等しいのでよい. wqbasis(t0q)qQs(K,Σ)より従う.

どんな有限区間Iωとどんなupos(wq,{tiq}iI)についてもubasis(t|I|q)なこと: I=nの場合が問題となる. t|I|q=t0rrϕ(q,w)なので,あるiωについてt0r=Σ(tnq,,tn+iq)となる. しかし,nicenessより,ubasis(tnq)basis(t0r)となる.よってよい.

ノルム条件sを満たしているのは明らか.

qqについて. r0ϕ(q,w)なのでその証拠となる区間分割(In:nω)をとる. J0=,J1={0},,Jn={n1},Jn+1=I1,Jn+2=I2,という区間分割を取ればqqの証拠となる.

ϕ(q,w)=rは明らか. (証明終わり)

定義 (近似する)

Qs(K,Σ)の条件pが順序数の名前τ˙nで近似するとは,任意のw1pos(wp,t0p,,tn1p)について,もしrQs(K,Σ)p以下にあり,wr=w1で,τ˙を決定しているものがあれば,条件(w1,tnp,tn+1p,)τ˙を決定している.

定理

(K,Σ)をfinitary creating pairとする.pQs(K,Σ)とし(τ˙m:mω)を順序数の名前の列とする.lωとする.

このとき,qQs(K,Σ)があって,次を満たす.

証明. p=(wp,t0p,t1p,)とする. 目的の条件q=(wq,s0,s1,)を定めていく. wq=wpとし,i<lに対してはsi=tipとする. nlに関する帰納法でqn,sn,tn+1n,tn+2n,を次を満たすように定める.

  1. ql=p
  2. qn+1=(wp,s0,,sn,tn+1n,tn+2n,)Qs(K,Σ)
  3. qn+1nqn
  4. もしw1pos(wp,s0,,sn1),mmupsn1かつ,あるrQs(K,Σ),r0(w1,sn,tn+1n,tn+2n,)が存在して,rτ˙mを決定するならば,(w1,sn,tn+1n,tn+2n,)もすでに決定している.

補題3より,上記の状況で(w1,sn,tn+1n,tn+2n,)Qs(K,Σ)の条件であることに注意する.

主張:上記の列を構成すれば定理の証明は終わる.

q(qn:nl)のfusionとする. nlmmupsn1を固定する. w1pos(wq,t0q,,tn1q)とする. rqwr=w1なものがτ˙mを決定していたとする. このrr0(w1,sn,tn+1n,tn+2n,)を満たす.

よって(iv)より(w1,sn,tn+1n,tn+2n,)τ˙mを決定する. したがって,(w1,sn,tn+1n,tn+2n+1,tn+3n+2,)も補題4よりそれより下の条件なのでτ˙mを決定する.

以上より,(i)-(iv)を満たす列を構成すればよいことがわかった. sn1までとtn+in1 (for iω)およびqnが定まったとする. pos(wp,s0,,sn1)×(mupsn1+1)の枚挙((win,min):i<kn)を取る. creating pairがfinitaryという仮定よりkn<ωである.

Qs(K,Σ)の条件の列(qn,k:kkn)を次を満たすように定める.

  1. qn,0=qn.
  2. qn,kは次の形:(wp,s0,,sn1,tnn,k,tn+1n,k,).
  3. qn,k+1nqn,k.
  4. あるrQs(K,Σ)r0(wkn,tnn,k,tn+1n,k,)τ˙mknを決定するならば,(wkn,tnn,k+1,tn+1n.k+1,)τ˙mknを決定する.
主張:上記の列を構成すれば,条件を満たすsntn+in (iω),qn+1を構成できる.

sn=tkn,kn,tn+in=tn+in,kn, qn+1=qn,knとおく. これが条件を満たすことを示す. (iii) qn+1nqnnの推移律より良い.

(iv)を見よう. w1pos(wp,s0,,sn1),mmupsn1とする. すると(w1,m)=(wkn,mkn)となるk<knが見つかる. rQs(K,Σ),r0(w1,sn,tn+1n,tn+2n,)があって,rτ˙mを決定するとする. 補題4より,この条件(w1,sn,tn+1n,tn+2n,)(wkn,tnn,k,tn+1n,k,)より0で下にあるので,(δ)より,(wkn,tnn,k+1,tn+1n,k+1,)τ˙mを決定している. よって,より強い条件(w1,sn,tn+1n,tn+2n,)τ˙mを決定している. これで(iv)が確認できた.

したがって,後は(α)-(δ)を満たす列(qn,k:kkn)を構成すれば証明終わりである. k<knについてqn,kまで構成できたとして,qn,k+1を構成する. (δ)の仮定を満たさない場合はqn,k+1=qn,kでよい. したがって,あるrQs(K,Σ)r0(wkn,tnn,k,tn+1n,k,)τ˙mknを決定すると仮定し,このようなrを一つ固定する. この場合は,補題5qn,krwknについて適用して得られる条件をqn,k+1とすればよい. (証明終わり)

(K,Σ)をfinitary creating pairとする. Qs(K,Σ)はAxiom Aを満たす.よって,Qs(K,Σ)はproperである.

証明. 順序数の名前τ˙pQs(K,Σ)nωを任意に取る. このとき定理をτ0=τとしてτ1,τ2,は何でも良い順序数の名前で適用したときqnpが取れて,qτを任意のmnで近似する. 各mnw1pos(wq,t0q,,tm1q)について,(w1,tmq,tm+1q,)τを決定するときその値をαw1mと書く.決定しないときは,αw1m=0とおいておく. このときx:={αw1m:mn,w1pos(wq,t0q,,tm1q)}は可算集合である (finitaryの仮定よりpos(wq,t0q,,tn1q)は有限集合だから). qτ˙xを示せばよい. qqを任意に取る. qqがあってτ˙の値を決定する. w1=wqとおく. w1の長さは十分長いと仮定できる.そこであるmnに対してw1pos(wq,t0q,,tn1q)である. qτmで近似するから,(w1,tmq,tm+1q,)τを決定している. よって決定されたその値はαw1mであり,x˙に属する. したがって,qτ˙xとなり証明が終わる. (証明終わり)

参考文献